鷲津政彦
2013年11月17日
グリード
トヨタがリーマン・ショック以前の水準まで経常利益を回復―２００８年９月１５日のリーマン・ブラザーズ破綻とそれに伴う金融危機はひとつのタームを表すほど、金融史に残る事件となった。
本書はリーマン破綻前夜の、サブプライムローン問題混乱期にサムライ・キャピタルの鷲津政彦はウォール街に姿を現す。アメリカを買い叩く…。かつてバブル崩壊の時に外資は屍を貪り食い尽くしていった、その仇討ちをするというのだろうか…。
強欲(グリード)と欺瞞に満ちたウォール街とワシントンD.Cを巡る金融界の死闘をエキサイティングに描き切った傑作です。
“カネ”という価値のバランスを取るための社会システムが金融資本主義によって踊り狂った世界とその崩壊。いつしか人間は道具であるはずの”カネ”に振り回されるようになっていた。地獄の沙汰もカネ次第というほど、”カネ”なしでは生きていけない社会にはなってしまったが、社会として成熟期に入っているとするならば、もう一歩先の安定があってもいいのではないだろうか。
しかし、今回の”鷲津政彦”もカッコよかったです。
本書はリーマン破綻前夜の、サブプライムローン問題混乱期にサムライ・キャピタルの鷲津政彦はウォール街に姿を現す。アメリカを買い叩く…。かつてバブル崩壊の時に外資は屍を貪り食い尽くしていった、その仇討ちをするというのだろうか…。
強欲(グリード)と欺瞞に満ちたウォール街とワシントンD.Cを巡る金融界の死闘をエキサイティングに描き切った傑作です。
“カネ”という価値のバランスを取るための社会システムが金融資本主義によって踊り狂った世界とその崩壊。いつしか人間は道具であるはずの”カネ”に振り回されるようになっていた。地獄の沙汰もカネ次第というほど、”カネ”なしでは生きていけない社会にはなってしまったが、社会として成熟期に入っているとするならば、もう一歩先の安定があってもいいのではないだろうか。
しかし、今回の”鷲津政彦”もカッコよかったです。
2009年06月07日
映画「ハゲタカ」
原作はすべて読んでいるし、興味のある分野なので観にいってきました。
感想としては…ドラマもそうだったけど、NHK制作ということもあってか”クソ”真面目でスリルがない。原作本が軽やかに繰り出す”遊び”がなく、かといってM＆A戦線における心理戦や防諜活動(インテリジェンス)での緊張感ずあるわけでもない。のっぺりと”神妙さ”が漂い、買収防衛策として原作がやっていた「クラウンジュエル」を展開するような専門性もない。そんなわけで、自分としては非常に物足りない作品でした。真山仁氏の原作『レッドゾーン』を面白く読んだだけに残念きわまりない。
冒頭は当然、マカオでのカジノから始まるものと思っていたのに…。スコッチ片手にカジノに興じ、裏では緻密な情報線を展開し、何千億という金を裁きながら相手を罠にはめ、静かな勝利に浸る、というスケールでやってほしかったな。もちろん、その中には泥臭い人間心理が渦巻いているわけだけど。
でも「日本は何も変わらない―」というセリフは印象的でした。
グローバルスタンダードといえども、結局何も変わらない。
『ウェブ進化論』の梅田氏が日本のウェブの在り方にある意味での失望感を吐露して波紋を呼んでいるが、まさに。「Web2.0」なんてなんのその。アナログのまま無駄なペーパーがオフィスに散乱しているではないか。取引先にFAXを送り、届いたかどうか電話で確認しているではないか。”ナレッジの共有”などごく一部の世界なのでしょう。
ステレオタイプなやり方に満足し、行くあてもなく袋小路に迷い込んだ日本(という修飾は語弊があるかもしれないけど)のどこに夢や希望があるのでしょうか。
レッドゾーン(上)
著者：真山 仁
販売元：講談社
発売日：2009-04-24
おすすめ度：
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レッドゾーン(下)
著者：真山 仁
販売元：講談社
発売日：2009-04-24
おすすめ度：
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ハゲタカ DVD-BOX
出演：大森南朋
販売元：ポニーキャニオン
発売日：2007-07-18
おすすめ度：
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感想としては…ドラマもそうだったけど、NHK制作ということもあってか”クソ”真面目でスリルがない。原作本が軽やかに繰り出す”遊び”がなく、かといってM＆A戦線における心理戦や防諜活動(インテリジェンス)での緊張感ずあるわけでもない。のっぺりと”神妙さ”が漂い、買収防衛策として原作がやっていた「クラウンジュエル」を展開するような専門性もない。そんなわけで、自分としては非常に物足りない作品でした。真山仁氏の原作『レッドゾーン』を面白く読んだだけに残念きわまりない。
冒頭は当然、マカオでのカジノから始まるものと思っていたのに…。スコッチ片手にカジノに興じ、裏では緻密な情報線を展開し、何千億という金を裁きながら相手を罠にはめ、静かな勝利に浸る、というスケールでやってほしかったな。もちろん、その中には泥臭い人間心理が渦巻いているわけだけど。
でも「日本は何も変わらない―」というセリフは印象的でした。
グローバルスタンダードといえども、結局何も変わらない。
『ウェブ進化論』の梅田氏が日本のウェブの在り方にある意味での失望感を吐露して波紋を呼んでいるが、まさに。「Web2.0」なんてなんのその。アナログのまま無駄なペーパーがオフィスに散乱しているではないか。取引先にFAXを送り、届いたかどうか電話で確認しているではないか。”ナレッジの共有”などごく一部の世界なのでしょう。
ステレオタイプなやり方に満足し、行くあてもなく袋小路に迷い込んだ日本(という修飾は語弊があるかもしれないけど)のどこに夢や希望があるのでしょうか。
レッドゾーン(上)著者：真山 仁
販売元：講談社
発売日：2009-04-24
おすすめ度：
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レッドゾーン(下)著者：真山 仁
販売元：講談社
発売日：2009-04-24
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ハゲタカ DVD-BOX出演：大森南朋
販売元：ポニーキャニオン
発売日：2007-07-18
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2009年05月02日
レッドゾーン
本屋で見つけて、あの"ゴールデン・イーグル"とまた相見えられるかと思うとワクワクして、久々に読みふけりました。
今回のターゲットは自動車産業。日本が誇る自動車メーカー「アカマ自動車」。
モデルは容易に想像がつきますね(笑)
グローバル企業にして、創業者一族へのある種の崇拝が続く会社に、成長著しい中国の投資ファンドが食指を動かす...。
構図としてはありがちかもしれないが、バックには金を持て余すCIC(中国系SWF)があり、アメリカのメガファンドまでもが暗躍する。
未曾有の存亡の危機にあたふたするアカマ自動車経営陣は、創業家の太一郎の片棒を担ぐクーデターとも対峙しながら、サムライ・キャピタル代表鷲津政彦をホワイトナイトに迎える。そこで展開する壮大なスケールの交渉に、ただ引き込まれていった。
そういう意味で期待を裏切らず最後まで楽しく読めた。
ビッグスリーを巡る話や日本の大企業へのTOBなどは、奇しくもクライスラーが破綻に追い込まれた折でもあり、あるいはアルセロール・ミタルと新日本製鐵の駆け引きなどと相まってリアリティがありました。
それにしても、グローバルなM＆A業界にあってもやはりネックはナショナリズムなのでしょうか。鷲津を通じて市場原理とはまた違うところで考えさせられました。
レッドゾーン(上)
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レッドゾーン(下)
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今回のターゲットは自動車産業。日本が誇る自動車メーカー「アカマ自動車」。
モデルは容易に想像がつきますね(笑)
グローバル企業にして、創業者一族へのある種の崇拝が続く会社に、成長著しい中国の投資ファンドが食指を動かす...。
構図としてはありがちかもしれないが、バックには金を持て余すCIC(中国系SWF)があり、アメリカのメガファンドまでもが暗躍する。
未曾有の存亡の危機にあたふたするアカマ自動車経営陣は、創業家の太一郎の片棒を担ぐクーデターとも対峙しながら、サムライ・キャピタル代表鷲津政彦をホワイトナイトに迎える。そこで展開する壮大なスケールの交渉に、ただ引き込まれていった。
そういう意味で期待を裏切らず最後まで楽しく読めた。
ビッグスリーを巡る話や日本の大企業へのTOBなどは、奇しくもクライスラーが破綻に追い込まれた折でもあり、あるいはアルセロール・ミタルと新日本製鐵の駆け引きなどと相まってリアリティがありました。
それにしても、グローバルなM＆A業界にあってもやはりネックはナショナリズムなのでしょうか。鷲津を通じて市場原理とはまた違うところで考えさせられました。
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2007年02月24日
ハゲタカ
ハゲタカ
- 著：真山仁
- 出版社：講談社
- 定価：820円
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現在NHK土曜ドラマとして放映中の「ハゲタカ」の原作。正直、ドラマより圧倒的に面白い。
バブル崩壊後、銀行の無責任な融資と経営者の放漫経営のツケから、日本の中小企業は不景気のどん底で“夢”を捨てきれないまま瀕死の状態に陥っていた。
“ゴールデンイーグル”の異名をとる企業買収のプロ鷲津政彦は、ニューヨークの投資ファンド会社の日本法人「ホライズン・キャピタル」を任され、三葉銀行の不良債権処理に伴うバルクセールをはじめ、次々と“死に体”と化した企業を買い漁って行く。
“ハゲタカ”か“救世主か”―
金利の支払さえ覚束ない経営者には投資ファンドの合理的な債権回収は地獄だった。他方、経営者の企業の私物化、“責任転嫁”と“問題の先送り”の醜さが色濃く浮かび上がってくる。
もともとはピアニストだった鷲津政彦がなぜ“ハゲタカ”に転進したのか。外資系投資ファンドとの“獲物”の争奪戦、都銀の“アングラの番犬”飯島との腹の探りあいなど冒頭部から終始ハラハラさせられる展開で一気に引き込まれていく。
また、鷲津政彦のほか、三葉銀行につとめ、企業再生ビジネスを手がける芝野健夫、老舗ホテルのオーナー松平貴子という複数軸で展開し、巧妙に絡み合ってきて面白い。
創業者一族の端くれの自分としては決して他人事ではなく、耳の痛い話でもあり、心強い話でもあった。専門用語もしっかり使っているので、若干とっつきにくさはあるかもしれないが、それだけに臨場感に溢れている。昨今、日本でも珍しくなくなったM＆Aだが、何かと敵視されやすい“ハゲタカ”の実態は意外に研究されていないと思う。この小説はその一端を窺い知ることのできる問題作である。
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