文芸

2018年06月12日

ダブル・ファンタジー

村山由佳の『ダブル・ファンタジー』。衝撃作といわれ、今般映像作品化されることで話題になっているが、思ったよりは衝撃を受けることはなかった。確かにステレオタイプの文学作品として捉えた場合には性に奔放な女性像の繰り返される描写はショッキングかもしれない。しかし、高遠奈津が必然的に堕ちていくその世界はいわば奈津自身の心のありようを映し出したかのようなものであり、その生きざま、相手によって少しずつ異なる対応に、その人間関係が如実に表出されており、表現の妙といえると思う。下手に男性作家が惰性的に描く性交渉とは趣が異なる。
女性脚本家である奈津には悶々とする「女性」の社会での生き方やリアルな夫婦間の溝が詰め込められており、少しずつ開放的になっていくのではあるが、その過程はもどかしくもあり、激しく揺れ動く感情の渦には共感できるところも多い。
作家のインタビューも出ていたが(新刊.jp)、確かに賛否両論だろうが、興味深い作品といえるだろう。

WOWOWドラマ >>> http://www.wowow.co.jp/dramaw/wf/







続編も発刊した模様。

ミルク・アンド・ハニー
村山 由佳
文藝春秋
2018-05-30



karnak at 23:55コメント(0) 

2018年04月30日

乾山晩愁

兄尾形光琳の死後、陶工として一世を風靡した乾山。
「もう一つの修羅」をテーマにほか5編から絵師たちの生き様を描く。

乾山晩愁 (角川文庫)
葉室 麟
角川グループパブリッシング
2008-12-25





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2018年03月25日

世界のなかで自分の役割を見つけること

魂のアーティスト小松美羽の著作。
アートとどのように向き合ってきたのか、それはとりもなおさず自分と向き合い、世界と向き合った結果である。小松美羽にとってそれはまた神に祈ること、魂を捧げることと同義なのかもしれない。
言葉一つひとつから不器用だけれど、真っ直ぐな生き様が浮かび上がり、感銘を受けた。

自分はどれだけ魂と向き合っているのだろうか。

今はカルマと向き合っているかもしれないが、まだまだおざなりにしてしまっている自分を感じた。
自分にとって大切な一冊になりそうだ。




小松美羽 −20代の軌跡− 2004-2014
小松 美羽
KADOKAWA/角川マガジンズ
2014-12-06



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2017年11月22日

ヤクザとオイルマネー

猫組長の対談形式の本書は世界的戦争の火種となってきた石油資源を巡る、金融の罠を描く。
世界を舞台にしたマーケットの動きは難解でありながらも刺激的でした。
仮想通貨の進展は新たなマネーロンダリングの温床になりかねないが、そういったリスクについても議論がある。
下流分野では決して窺い知ることのできないめくるめく世界、これからの展開は未知であり、茨だが、本書から学ぶことも多かったように思う。





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2017年11月01日

信長の二十四時間

誰もが知る「本能寺の変」だが、謎が多いのも事実だった。
黒幕は誰か。
誰が騙したのか、誰が騙されたのか。
歴史的にも明智光秀の新たな書状が発見されるなど、まだまだ未知との遭遇は多い。

様々な説が飛び交う中で、本著はかつてない迫力で信長最期の24時間を活写している。
そして、信長の生き様もまた炙りだされる。

信長の二十四時間 (講談社文庫)
富樫 倫太郎
講談社
2017-10-13



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2017年10月22日

琥珀の夢

以前から知りたいと思っていたサントリーの歴史が小説『琥珀の夢』という形で実現。
伊集院静り「琥珀の夢」はサントリーの前身「寿屋」の創業者である鳥井信治郎の一生を描く。
両替商から米穀商に転じた鳥井商店の次男に生まれた信治郎は丁稚奉公時代から描くそのすべてを活かしてきたのだと実感できる。
卓越した味覚と商魂を武器に、無謀とも思える国内ウィスキー製造をやってのけていくのは並大抵の辛苦ではなかった。しかし、多くは挫折することをやり抜いたのが鳥井信治郎であり、それこそがサントリーの礎になっているのだろう。

印象深かったのは関東大震災で罹災した東京日本橋の販売店を見舞うシーンであり、救援物資はもちろんだったが、売掛伝票を破り捨てた上で、なお「赤玉」を納品しているところだった。

戦前から戦後を走り抜けた生き様は従業員を家族と思う経営姿勢からも、どこか出光佐三思い出すが、大阪船場から立ち上がった商人像は現代社会にあっても大きな存在感をもっている。

現会長佐治信忠がジム・ビームを巨額を投じて買収、非上場企業ながら躍進を続けつつ、プロ社長を招聘して次代につなごうとするところからも今後が注目される。

サントリー公式






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2017年09月10日

たった一人の熱狂

幻冬舎代表取締役社長見城徹が、その熱狂な人生から吐き出した55の力強い言葉が綴られている。

「スマートであること」に憑りつかれた現代社会はずいぶん醒めた時代になってしまったが、こういう熱い人間は好きだ。これからはAIの時代が来るというが、ならば人間は何をするというのだろう。
「熱狂しなかったら、生きている意味がない」というが、まさしくその通りだろう。

自分自身もまた社会人になってから10年間は熱狂から遠ざかってしまった。
言い訳に過ぎないが、熱狂を取り戻すまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

特別収録の中で、アフリカに伝わる言葉として次のような引用がある。
「君がなんとなく生きた今日は、昨日死んでいった人達が、どうしても生きたかった大切な日だ。」
まとめにはぴったりかもしれない。

本書はキレイゴトなんかではなくて、ズバズバ斬りこむように攻めたてる本で、すごくよかった。




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海鳴り

藤沢周平記念館でいろいろ見ていて気になったので読んでみました。

仲買から成り上がった紙問屋小野屋の旦那新兵衛はひょんなところから丸子屋のおかみ「おこう」と知り合う。
今で言えばダブル不倫だが、当時は密通罪に問われる時代だ。
商売のこと、家族のことで様々な問題が降りかかる中、新兵衛は戻れぬところまで来てしまう。
魔が差したのか、命を懸けた純愛なのか。

新兵衛のモノローグからは現代にも通じる"仕事と家族"のバランス、己の人生の先々について考えさせられるものだ。

訥々と、しかし確かな筆致に江戸風情が彩られた時代小説、市井の物語として興味深く読めた。




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2017年07月03日

未来の年表

話題になりつつある本書「未来の年表」。
刻々と迫る人口減少社会の現実を未来年表に炙りだしていきます。
例えば「2024年 全国民の3分の1が65歳以上」。
衝撃的ですね。しかもそんなに遠い話ではない。
縮小していく社会は、経済成長を続けてきた今までとはまったく違う未知の世界だ。
常識の通用しないその有り様を本書は示唆してくれる。




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2017年07月01日

神社めぐりをしていたらエルサレムに立っていた

タレント本かもしれないが、内容はすごくいい。
タイトル「神社めぐりをしていたらエルサレムに立っていた」がまず至言だと思います。
日ユ同祖論については異論もあるでしょうが、古代史、日本人のルーツを探れば必ずぶち当たります。実際ヘブライ語を語源とするであろう日本語も数知れず、神社絡みの儀式にはその痕跡があります。
ムー関連書籍に深堀されたものがあるが、本書では少しずつ触れながら日本に残された「失われた十氏族」の痕跡とそのルーツである聖地を結ぶ旅を流暢に描いています。
いつかエルサレムへ、そう思わせる一冊でした。







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2017年05月03日

社長室の冬

日本新報の南は記者職から追われ、社長室で新里新社長と身売りに奔走。元新報社員だったAMCジャパンの青井社長はアメリカ本社の指令を受けて新報買収交渉を進める。
新聞とWEB配信という新旧の闘いでもあった。
経営危機に瀕した新報は身売りに将来をかけるが...。
ステークホルダーそれぞれの思いが交錯し、結局は日本人らしい帰着点。

メディア業界においても近年、ビジネスモデルの崩壊が叫ばれて久しい。
発行部数をめぐっては業界タブーと言われるくらい「販売店への流通量」で取り繕っている状況が続く。
新聞・ラジオ・テレビ、すべてにおいて広告収入は減少傾向だ。
アメリカにおいても身売りが発生している状況下で、日本でもアナログの需要は減少の一途を辿る。
M&Aか倒産かという究極の選択も遠くない将来、現実のものとなるにちがいない。

社長室の冬
堂場 瞬一
集英社
2016-12-05



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2017年04月23日

大暴落−ガラ−

突如として成立した初の女性総理大臣三崎皓子。
そして、未曽有の困難が次々と立ちはだかる。
東京を襲う大洪水と日本国債の大暴落だ。

臨時国会、所信表面演説の席上、三崎総理が啖呵を切る。
読者は揚げ足取りに躍起になる政治の今を見、ゴシップを追いかけ、国を貶めるマスゴミの今と重ねて溜飲を下げ、あるいは現実に失望するだろう。

全体として足早にストーリーを流してしまったために、読みやすさはあったものの、対峙すべき問題の掘り下げが薄っぺらくなってしまったのには難ありというべきだろうか。

しかし、日本が近い将来直面するだろう危機の重みを考えなければないだろう。

大暴落 ガラ
幸田 真音
中央公論新社
2017-03-08



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2017年04月03日

怪物商人

大倉組を母体とした現在の大成建設をはじめ、東京電力や帝国劇場、帝国ホテルなどの創業を数多く手がけた稀代の実業家、大倉喜八郎を描く。
江戸末期、新発田藩から江戸に出て、乾物屋を営む一介の商人が生死を駆け抜け、時代を駆け抜けた様が活き活き描かれていている。木戸孝允や大久保利通をはじめ、政界との脈をつなぎつつ、戦争とともにのし上がったことから「政商」「死の商人」と批判を浴びたが、国内にとどまらず、台湾・朝鮮・中国・満州とその時々の敵味方を問わず知己を得て商売につなげたのは並大抵のことではない。たとえば孫文の革命運動にも関与しつつ、満州鉄道に連なる鉄道事業にも惜しみなく投資している。

明治維新、戦後、そして現代。いままさに時代を切り拓く人物が求められている。

怪物商人 (PHP文芸文庫)
江上 剛
PHP研究所
2017-01-08



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2016年09月18日

最強の経営者−小説樋口廣太郎

高杉良の最新作は"アサヒビールを再生させた男"樋口廣太郎"を扱う。
住友銀行副頭取に登り詰めた樋口だったが、イトマン融資を巡る会長との意見の対立からか銀行OBが社長となっていたアサヒビールの社長に収まる。そして「夕日」ビールなどと揶揄された同社の立て直しに奔走する。
顧問時代にグループを掌握した樋口は類稀な胆力とリーダーシップを発揮する。スーパードライでヒットを飛ばし、その後の成長の礎を築くと、茨城工場の建設等積極投資を推進した。
その後は日本経済・文化界で要職を歴任。型破りなリーダーとして名を馳せた。

著者らしい語り口が随所にみられるが、著者渾身の作品と樋口へのリスペクトが感じられる内容だった。
樋口が社長を務めた時代からは失われた時代と称されて久しいが、これだけの行動力を持つ人間が今の日本にも望まれているように思う。




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2016年07月30日

架空通貨

人気小説家となった池井戸潤の初期作品。
女子高生麻紀の父が経営する会社が破綻。
女子高生の担任辛島が元信用調査会社出身という設定で物語は展開する。
地域通貨、マネーロンダリング、粉飾決算...。過去の作品と言えども、ホットな設定でスリリングに展開していくストーリーは面白く、引き込まれる。
「担任の先生」が欺瞞に満ちた会社のトップを追い込んでいく様は無理やり感もあるが、それ以上に熱い。

架空通貨 (講談社文庫)
池井戸 潤
講談社
2003-03-15




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2015年07月01日

絶歌

神戸連続児童殺傷事件−ひとつ上、同世代の起こした事件として酒鬼薔薇聖斗の名は鮮烈に記憶されている。
その手記である『絶歌』の出版については賛否両論あるが、この点は”出版”という形が適当であったのか確かに疑問が残る。

しかし、加害者による生々しい告白という点では貴重な文献といっていいだろう。
事件後、紙面に載った「懲役13年」という文章は興味深かったのだが、今回も文学じみた文章の綴りにはある意味では感心させられる。

「少年院」という籠から飛び出して10年。流浪の果てに感じることのできた人間らしさが、罪の重みを感じさせることになったようだ。

「結局どこへ行っても、僕は、僕からは逃げられなかった。」

この感覚は、誰もが逃げることのできない感覚だ。

遺族も、そして加害者も、消えることのない痛みとともに、なお生きていかなければならない。

そして、この本が元少年Aの自己救済のために書かれているという点で、特に被害者側は許しがたいことであろうし、社会通念上も許容できないものだろう。

様々な内省はあるものの、結局突っ切った自我を抑制できずに表面化させてしまうところは、事件当初の性質と変わっていないのではないか。

絶歌
元少年A
太田出版
2015-06-11




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2015年03月06日

溝鼠

幸福な人の人生を破壊することだけが生き甲斐の下衆野郎ばかりが変態の限りを尽くすグロテスクなハードコア・ワールド。
サディストの源治と溝鼠鷹場栄一、ヤクザの宝田と鷹場の姉で宝田の情婦澪。
「氷結する時間。氷結する思考。氷結する心臓。」
己の腕力とカネしか頼みにできない世界で嵌めるか嵌められるか、殺すか殺されるかの死闘を繰り広げる。
あまりにそういった展開が続くとこちらも麻痺してくる。

溝鼠 (徳間文庫)
新堂 冬樹
徳間書店
2006-03



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2015年02月11日

俺たちの読書会 #05

わかっちゃいるけど本を読めない。
そんな俺たちでも1ヶ月に1回、みんなで読むならきっと読める!
「日本で一番ユルい読書会」改め、「俺たちの読書会」です。
今回ファシリテーターはカルナックが務めさせていただきました。

今回の課題本は京セラを創業し、JALを復活させた名経営者稲盛氏の『成功の要諦』。
推薦したお二方が欠席するというアクシデントに見舞われましたが、たぶん今までで一番ゆるくて濃い時間になったように思います(笑)

成功の要諦
稲盛和夫
致知出版社
2014-11-25


続きを読む

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2015年01月18日

人生の目的

「人生とは何か」は生きていく中で必ずぶち当たる。
本書はそうした疑問を抱き、自分の生き方に自信を失いかけている人たちへ語りかけるかのように丁寧に紐解いていく内容である。

結局、人はいろいろなものに縛られて、あるいは縛られていると勘違いして自分自身を見失ってしまっているのでしょうね。

自分も「押し殺したよう」だとよく言われます。
確かに自分を失い続けている感じがしています。

宿命は変えられないけれど、運命は意識を変えれば変えていけるはず。
いま一度自分とよく向き合ってみたいと思います。








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2014年09月18日

花の鎖

梨花・美雪・紗月という3人の女性に謎の人物"K"が絡みながら少しずつ物語の核心に迫っていく。3人を並行して描く場合、時系列が同じであることが多いように思うが、この作品では入り乱れているので、慣れるまでは誰が誰だか混乱しそうだ。

親族に大きな傷跡とわだかりを残した"事故"は時を経てなお、障害を残していた。
連鎖する憎しみ、解き放たれることのない鎖。
そこかしこに彩られた"花"はいったい何を意味するのか。
湊かなえの精緻なミステリに、読後は「やられた」との想いを強く残すことだろう。
そういう意味では解説にもあるように二度読みするのもよいのかもしれない。

読者はその巧みに繋がれた"鎖"から解き放たれるだろうか。

花の鎖 (文春文庫)
湊 かなえ
文藝春秋
2013-09-03



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2014年08月24日

宴のあと

いわゆる正統派文学の系統は得意分野ではないのだが、三島文学も然り。
「宴のあと」はタイトルから主題に想像がついたので読んでみたくなった作品だった。
買い置いてしばらく経つが、読み始めると「かづ」の人生の熱情の渦に一気に飲み込まれていった。

話は雪後庵の女将かづを中心に、そこに訪れる政治家や隠居の面々との交流や来る都知事選の顛末を描く。解説にもあるが、

「知識人」の空想的な理想より、「民衆」の生命力に富む現実感覚の方がより政治的であった


ということなのだろう。しかし、それだけに留まらず作者自身の政治観や安保闘争へのアイロニー、あるいはかづと野口氏に見られるような男女間の根本性質の相違にも焦点が当たっているといえよう。

個人的には「活力の孤独」という点に共感を覚えた。
駆け続けるかづの人生の選択と、野口氏の余生。
「宴のあと」の対照的な結末にもやはり作者の人生観を垣間見ることになるだろう。

読者を引き込む終始丁寧な筆致で、世代関係なく読むことができる作品である。

宴のあと (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社
1969-07-22



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2014年08月16日

女のいない男たち

村上春樹の新作は短編小説集「女のいない男たち」。
発売してからしばらく経つが、ようやく読了した。
短編集という形態自体珍しいが、タイトルもまた不思議な印象。

彼らに女がいなかったわけではない。
様々な形で失われてしまったのだ。

テーマの深層は「木野」で語られているのではないだろうか。

「欠けてしまった」何か。

それは私たち一人ひとりにももちろんあるだろう。

その間隙を縫って「蛇」は忍び寄ってくる。
それは決してマイナスとは限らないのかもしれない。
「両義的」なものなのだ。

そして私たちは確かに傷つきながら生きていくしかないのだ。
時にひとりで涙しながら。


女のいない男たち
村上 春樹
文藝春秋
2014-04-18



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2014年04月20日

タックスヘイヴン

シンガポールで1,000億円を運用する日本人ファンドマネージャーが不審死を遂げた。その妻の高校時代の同級生によって不可解な死が紐解かれ、いくつもの死とともに、あまりにも深い闇が炙り出される。資本主義社会にあって、”カネ”に翻弄され続ける先にはこうしたタックスヘイヴンが存在し、結局は政治も公安もヤクザも北朝鮮も裏では繋がっている同じ穴のムジナなのだ。
“御用聞き”古波蔵祐(こばくらたすく)がゴミ溜めのような世界をハードボイルドに渡り歩くスリリングな展開で、北朝鮮の張成沢粛清や核開発問題、タックスヘイヴン、公安組織の闇、ODAに纏わるカネの問題を巧く抉りながらも、儚げな恋愛模様も描く面白い作品でした。
ゴミ溜めと変わらない日本の政治組織(在日?)に税金を吸い上げられるのはまっぴらだけど、行き着くところは破滅という世界に足を踏み入れるよりはささやかな幸福に浸っていたいですね(^^;)





タックス・ヘイヴンとは、一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される国や地域のことである。租税回避地(そぜいかいひち)とも呼ばれる。 【wikipedia】

現在はタックスへイヴン対策税制が敷かれ、規制が強まっている。

こちらのサイトでは租税回避地にオフショア法人を設立している法人を検索できたりします。続きを読む

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2014年01月05日

草原の風

長編の歴史小説が多い宮城谷作品からは時間の関係でしばらく離れていましたが、やはりいいものですね。
『草原の風』は後漢を興した劉秀(光武帝)を描いた作品。

前漢後期、新王朝王莽の暴政に人民は疲弊していた。各地で叛乱が起きつつあったころ、留学から帰っていた劉秀は起った。それは多くの親族を失い、自らも幾度となく危機にさらされる苦難の道のりだった。しかし、「赤心を推して人の腹中に置く」劉秀、「徳は弧ならず」であった。人心をつかみ、次第に中原を併呑し、ついには皇帝となった。

上・中・下三巻に及ぶ本書は様々に中国史書を引用しており、読み応えがあった。近年忘れかけていた充足感を得ることができるひとときだ。

現代はどうだろうか。徳を積む、という感覚はとうに失われてはいないだろうか。虚空に喘ぎ、欲望に溺れていないだろうか。
歴史に学び、日々の精進にあたりたいものである。

草原の風(上) (中公文庫)
宮城谷 昌光
中央公論新社
2013-09-21


草原の風(中) (中公文庫)
宮城谷 昌光
中央公論新社
2013-10-23


草原の風(下) (中公文庫)
宮城谷 昌光
中央公論新社
2013-11-22



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2013年12月15日

世界をひとりで歩いてみた

当初は春先に発売と思っていましたが、大幅に加筆修正?して待望の発売。




読み終えると、大学時代の初海外中国ひとり旅が思い出されました。改めて日記を読むと、自分でもすごいと思うくらいだし(^^;)
でも、安全さえ確保できるならば、こうした自由な旅は最高に楽しいし、得るものも大きいのではないかなと思います。



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2013年11月17日

グリード

トヨタがリーマン・ショック以前の水準まで経常利益を回復―2008年9月15日のリーマン・ブラザーズ破綻とそれに伴う金融危機はひとつのタームを表すほど、金融史に残る事件となった。

本書はリーマン破綻前夜の、サブプライムローン問題混乱期にサムライ・キャピタルの鷲津政彦はウォール街に姿を現す。アメリカを買い叩く…。かつてバブル崩壊の時に外資は屍を貪り食い尽くしていった、その仇討ちをするというのだろうか…。
強欲(グリード)と欺瞞に満ちたウォール街とワシントンD.Cを巡る金融界の死闘をエキサイティングに描き切った傑作です。

“カネ”という価値のバランスを取るための社会システムが金融資本主義によって踊り狂った世界とその崩壊。いつしか人間は道具であるはずの”カネ”に振り回されるようになっていた。地獄の沙汰もカネ次第というほど、”カネ”なしでは生きていけない社会にはなってしまったが、社会として成熟期に入っているとするならば、もう一歩先の安定があってもいいのではないだろうか。

しかし、今回の”鷲津政彦”もカッコよかったです。

グリード 上
真山 仁
講談社
2013-10-30

グリード 下
真山 仁
講談社
2013-10-30



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2013年10月30日

だから荒野

46歳の誕生日、中年夫婦の不和から妻が家出する顛末を描いた作品。
ある意味では突拍子のない展開に驚きを禁じ得ないのだが、あるいは”事実は小説より奇なり”で、こんなこともあるのかもしれない。

”家族””会社””学校”という均衡に保たれている日常の崩壊は、もしかしたらちょっとしたことで起きるのかもしれない。
しかし、環境を変えてもその人間の本質はそうそう変わるものでもない。

この作品では人間の、誰もが持っている醜い部分がふんだんに散りばめられている。無神経な物言い、騙し、女性関係、仲間内の噂…。感受性の高い読者なら耳が痛いことも多いだろう。

とにかく、遠くへ荒野を走る。
果たして、そんなことは可能だろうか。

私たちは果てしない荒野の向こうに何を見るのだろうか。

だから荒野
桐野 夏生
毎日新聞社
2013-10-08



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2013年09月17日

祈りの幕が下りる時

つい、一気に読んでしまいました。
読書タイムは自分にとっては至福の時間だと改めて思います。
帯のコピーで即買いしたのですが...。

「悲劇なんかじゃない これがわたしの人生」

運命の行方など誰にもわかりはしない。
逃れられない断崖から極限の秘密を抱えて生きていくことになった人間が、想いを馳せた相手と息子。その人物こそが事件を解き明かす当事者になっていく。
人との関わりを避けてきたはずなのに、その心の底にはありったけの人間の情愛があった。

「ありがとう。博美、ありがとう」

登場人物の有様がありありと瞼の裏に浮かび、涙せずにはいられない。

"悲劇"という言葉で片付けられない苦しみを抱えて生き抜いてきたから、思い残すことはなかったのでしょう。
それこそ一世一代の『異聞・曽根崎心中』の舞台が終わるのだ。

運命の行方はわからないが、その足跡は確かに残っていく。
他人の価値観では測りきれない生き様がそこにある。




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2013年08月18日

どん底から生まれた宅急便

気になっていた本で、一気に読んでしまいました。
今でこそ当たり前に普及している宅急便、それでも挑戦を続けるヤマト運輸の精神を目の当たりにしたような気がしました。
新しいサービスを立ち上げ、社内に始まり、官公庁とわたりあるき、社長にまでなった著者がその想いをぶつけた本書は本当に貴重だと思いますね。

どん底から生まれた宅急便
都築 幹彦
日本経済新聞出版社
2013-04-23



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2013年07月15日

球体の蛇

どういうわけか、炎天下の大阪城公園周辺で立ちながら読むことになったが、一気に読んでしまった。

離婚をきっかけに実の両親とは異なる2人姉妹(サヨとナオ)とその両親(乙太郎と逸子)のもとで身を寄せて少年期を過ごしてきた「私」の物語。
その"家族"を見舞った事件は二人の命を奪い、残された者にも大きな傷跡を残すことになる。

"やさしい"嘘だったのか、恣意的な嘘だったのか、思い込みだったのか。
小さいはずだった過ちが、それぞれの人生を翻弄し、罪悪感となって苦しめていく。

結局、本当のところはわからない。

そのなかで、人は苦悶して生き、自ら命を絶つこともある。

道尾秀介氏の作品は毎度人間感情の深淵を覗くところがあって、非常に心に沁みる。

球体の蛇 (角川文庫)球体の蛇 (角川文庫) [文庫]
著者:道尾 秀介
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
(2012-12-25)



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