文芸

2017年07月03日

未来の年表

話題になりつつある本書「未来の年表」。
刻々と迫る人口減少社会の現実を未来年表に炙りだしていきます。
例えば「2024年 全国民の3分の1が65歳以上」。
衝撃的ですね。しかもそんなに遠い話ではない。
縮小していく社会は、経済成長を続けてきた今までとはまったく違う未知の世界だ。
常識の通用しないその有り様を本書は示唆してくれる。




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2017年07月01日

神社めぐりをしていたらエルサレムに立っていた

タレント本かもしれないが、内容はすごくいい。
タイトル「神社めぐりをしていたらエルサレムに立っていた」がまず至言だと思います。
日ユ同祖論については異論もあるでしょうが、古代史、日本人のルーツを探れば必ずぶち当たります。実際ヘブライ語を語源とするであろう日本語も数知れず、神社絡みの儀式にはその痕跡があります。
ムー関連書籍に深堀されたものがあるが、本書では少しずつ触れながら日本に残された「失われた十氏族」の痕跡とそのルーツである聖地を結ぶ旅を流暢に描いています。
いつかエルサレムへ、そう思わせる一冊でした。







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2017年05月03日

社長室の冬

日本新報の南は記者職から追われ、社長室で新里新社長と身売りに奔走。元新報社員だったAMCジャパンの青井社長はアメリカ本社の指令を受けて新報買収交渉を進める。
新聞とWEB配信という新旧の闘いでもあった。
経営危機に瀕した新報は身売りに将来をかけるが...。
ステークホルダーそれぞれの思いが交錯し、結局は日本人らしい帰着点。

メディア業界においても近年、ビジネスモデルの崩壊が叫ばれて久しい。
発行部数をめぐっては業界タブーと言われるくらい「販売店への流通量」で取り繕っている状況が続く。
新聞・ラジオ・テレビ、すべてにおいて広告収入は減少傾向だ。
アメリカにおいても身売りが発生している状況下で、日本でもアナログの需要は減少の一途を辿る。
M&Aか倒産かという究極の選択も遠くない将来、現実のものとなるにちがいない。

社長室の冬
堂場 瞬一
集英社
2016-12-05



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2017年04月23日

大暴落−ガラ−

突如として成立した初の女性総理大臣三崎皓子。
そして、未曽有の困難が次々と立ちはだかる。
東京を襲う大洪水と日本国債の大暴落だ。

臨時国会、所信表面演説の席上、三崎総理が啖呵を切る。
読者は揚げ足取りに躍起になる政治の今を見、ゴシップを追いかけ、国を貶めるマスゴミの今と重ねて溜飲を下げ、あるいは現実に失望するだろう。

全体として足早にストーリーを流してしまったために、読みやすさはあったものの、対峙すべき問題の掘り下げが薄っぺらくなってしまったのには難ありというべきだろうか。

しかし、日本が近い将来直面するだろう危機の重みを考えなければないだろう。

大暴落 ガラ
幸田 真音
中央公論新社
2017-03-08



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2017年04月03日

怪物商人

大倉組を母体とした現在の大成建設をはじめ、東京電力や帝国劇場、帝国ホテルなどの創業を数多く手がけた稀代の実業家、大倉喜八郎を描く。
江戸末期、新発田藩から江戸に出て、乾物屋を営む一介の商人が生死を駆け抜け、時代を駆け抜けた様が活き活き描かれていている。木戸孝允や大久保利通をはじめ、政界との脈をつなぎつつ、戦争とともにのし上がったことから「政商」「死の商人」と批判を浴びたが、国内にとどまらず、台湾・朝鮮・中国・満州とその時々の敵味方を問わず知己を得て商売につなげたのは並大抵のことではない。たとえば孫文の革命運動にも関与しつつ、満州鉄道に連なる鉄道事業にも惜しみなく投資している。

明治維新、戦後、そして現代。いままさに時代を切り拓く人物が求められている。

怪物商人 (PHP文芸文庫)
江上 剛
PHP研究所
2017-01-08



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2016年09月18日

最強の経営者−小説樋口廣太郎

高杉良の最新作は"アサヒビールを再生させた男"樋口廣太郎"を扱う。
住友銀行副頭取に登り詰めた樋口だったが、イトマン融資を巡る会長との意見の対立からか銀行OBが社長となっていたアサヒビールの社長に収まる。そして「夕日」ビールなどと揶揄された同社の立て直しに奔走する。
顧問時代にグループを掌握した樋口は類稀な胆力とリーダーシップを発揮する。スーパードライでヒットを飛ばし、その後の成長の礎を築くと、茨城工場の建設等積極投資を推進した。
その後は日本経済・文化界で要職を歴任。型破りなリーダーとして名を馳せた。

著者らしい語り口が随所にみられるが、著者渾身の作品と樋口へのリスペクトが感じられる内容だった。
樋口が社長を務めた時代からは失われた時代と称されて久しいが、これだけの行動力を持つ人間が今の日本にも望まれているように思う。




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2016年07月30日

架空通貨

人気小説家となった池井戸潤の初期作品。
女子高生麻紀の父が経営する会社が破綻。
女子高生の担任辛島が元信用調査会社出身という設定で物語は展開する。
地域通貨、マネーロンダリング、粉飾決算...。過去の作品と言えども、ホットな設定でスリリングに展開していくストーリーは面白く、引き込まれる。
「担任の先生」が欺瞞に満ちた会社のトップを追い込んでいく様は無理やり感もあるが、それ以上に熱い。

架空通貨 (講談社文庫)
池井戸 潤
講談社
2003-03-15




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2015年07月01日

絶歌

神戸連続児童殺傷事件−ひとつ上、同世代の起こした事件として酒鬼薔薇聖斗の名は鮮烈に記憶されている。
その手記である『絶歌』の出版については賛否両論あるが、この点は”出版”という形が適当であったのか確かに疑問が残る。

しかし、加害者による生々しい告白という点では貴重な文献といっていいだろう。
事件後、紙面に載った「懲役13年」という文章は興味深かったのだが、今回も文学じみた文章の綴りにはある意味では感心させられる。

「少年院」という籠から飛び出して10年。流浪の果てに感じることのできた人間らしさが、罪の重みを感じさせることになったようだ。

「結局どこへ行っても、僕は、僕からは逃げられなかった。」

この感覚は、誰もが逃げることのできない感覚だ。

遺族も、そして加害者も、消えることのない痛みとともに、なお生きていかなければならない。

そして、この本が元少年Aの自己救済のために書かれているという点で、特に被害者側は許しがたいことであろうし、社会通念上も許容できないものだろう。

様々な内省はあるものの、結局突っ切った自我を抑制できずに表面化させてしまうところは、事件当初の性質と変わっていないのではないか。

絶歌
元少年A
太田出版
2015-06-11




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2015年03月06日

溝鼠

幸福な人の人生を破壊することだけが生き甲斐の下衆野郎ばかりが変態の限りを尽くすグロテスクなハードコア・ワールド。
サディストの源治と溝鼠鷹場栄一、ヤクザの宝田と鷹場の姉で宝田の情婦澪。
「氷結する時間。氷結する思考。氷結する心臓。」
己の腕力とカネしか頼みにできない世界で嵌めるか嵌められるか、殺すか殺されるかの死闘を繰り広げる。
あまりにそういった展開が続くとこちらも麻痺してくる。

溝鼠 (徳間文庫)
新堂 冬樹
徳間書店
2006-03



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2015年02月11日

俺たちの読書会 #05

わかっちゃいるけど本を読めない。
そんな俺たちでも1ヶ月に1回、みんなで読むならきっと読める!
「日本で一番ユルい読書会」改め、「俺たちの読書会」です。
今回ファシリテーターはカルナックが務めさせていただきました。

今回の課題本は京セラを創業し、JALを復活させた名経営者稲盛氏の『成功の要諦』。
推薦したお二方が欠席するというアクシデントに見舞われましたが、たぶん今までで一番ゆるくて濃い時間になったように思います(笑)

成功の要諦
稲盛和夫
致知出版社
2014-11-25


続きを読む

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2015年01月18日

人生の目的

「人生とは何か」は生きていく中で必ずぶち当たる。
本書はそうした疑問を抱き、自分の生き方に自信を失いかけている人たちへ語りかけるかのように丁寧に紐解いていく内容である。

結局、人はいろいろなものに縛られて、あるいは縛られていると勘違いして自分自身を見失ってしまっているのでしょうね。

自分も「押し殺したよう」だとよく言われます。
確かに自分を失い続けている感じがしています。

宿命は変えられないけれど、運命は意識を変えれば変えていけるはず。
いま一度自分とよく向き合ってみたいと思います。








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2014年09月18日

花の鎖

梨花・美雪・紗月という3人の女性に謎の人物"K"が絡みながら少しずつ物語の核心に迫っていく。3人を並行して描く場合、時系列が同じであることが多いように思うが、この作品では入り乱れているので、慣れるまでは誰が誰だか混乱しそうだ。

親族に大きな傷跡とわだかりを残した"事故"は時を経てなお、障害を残していた。
連鎖する憎しみ、解き放たれることのない鎖。
そこかしこに彩られた"花"はいったい何を意味するのか。
湊かなえの精緻なミステリに、読後は「やられた」との想いを強く残すことだろう。
そういう意味では解説にもあるように二度読みするのもよいのかもしれない。

読者はその巧みに繋がれた"鎖"から解き放たれるだろうか。

花の鎖 (文春文庫)
湊 かなえ
文藝春秋
2013-09-03



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2014年08月24日

宴のあと

いわゆる正統派文学の系統は得意分野ではないのだが、三島文学も然り。
「宴のあと」はタイトルから主題に想像がついたので読んでみたくなった作品だった。
買い置いてしばらく経つが、読み始めると「かづ」の人生の熱情の渦に一気に飲み込まれていった。

話は雪後庵の女将かづを中心に、そこに訪れる政治家や隠居の面々との交流や来る都知事選の顛末を描く。解説にもあるが、

「知識人」の空想的な理想より、「民衆」の生命力に富む現実感覚の方がより政治的であった


ということなのだろう。しかし、それだけに留まらず作者自身の政治観や安保闘争へのアイロニー、あるいはかづと野口氏に見られるような男女間の根本性質の相違にも焦点が当たっているといえよう。

個人的には「活力の孤独」という点に共感を覚えた。
駆け続けるかづの人生の選択と、野口氏の余生。
「宴のあと」の対照的な結末にもやはり作者の人生観を垣間見ることになるだろう。

読者を引き込む終始丁寧な筆致で、世代関係なく読むことができる作品である。

宴のあと (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社
1969-07-22



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2014年08月16日

女のいない男たち

村上春樹の新作は短編小説集「女のいない男たち」。
発売してからしばらく経つが、ようやく読了した。
短編集という形態自体珍しいが、タイトルもまた不思議な印象。

彼らに女がいなかったわけではない。
様々な形で失われてしまったのだ。

テーマの深層は「木野」で語られているのではないだろうか。

「欠けてしまった」何か。

それは私たち一人ひとりにももちろんあるだろう。

その間隙を縫って「蛇」は忍び寄ってくる。
それは決してマイナスとは限らないのかもしれない。
「両義的」なものなのだ。

そして私たちは確かに傷つきながら生きていくしかないのだ。
時にひとりで涙しながら。


女のいない男たち
村上 春樹
文藝春秋
2014-04-18



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2014年04月20日

タックスヘイヴン

シンガポールで1,000億円を運用する日本人ファンドマネージャーが不審死を遂げた。その妻の高校時代の同級生によって不可解な死が紐解かれ、いくつもの死とともに、あまりにも深い闇が炙り出される。資本主義社会にあって、”カネ”に翻弄され続ける先にはこうしたタックスヘイヴンが存在し、結局は政治も公安もヤクザも北朝鮮も裏では繋がっている同じ穴のムジナなのだ。
“御用聞き”古波蔵祐(こばくらたすく)がゴミ溜めのような世界をハードボイルドに渡り歩くスリリングな展開で、北朝鮮の張成沢粛清や核開発問題、タックスヘイヴン、公安組織の闇、ODAに纏わるカネの問題を巧く抉りながらも、儚げな恋愛模様も描く面白い作品でした。
ゴミ溜めと変わらない日本の政治組織(在日?)に税金を吸い上げられるのはまっぴらだけど、行き着くところは破滅という世界に足を踏み入れるよりはささやかな幸福に浸っていたいですね(^^;)





タックス・ヘイヴンとは、一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される国や地域のことである。租税回避地(そぜいかいひち)とも呼ばれる。 【wikipedia】

現在はタックスへイヴン対策税制が敷かれ、規制が強まっている。

こちらのサイトでは租税回避地にオフショア法人を設立している法人を検索できたりします。続きを読む

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2014年01月05日

草原の風

長編の歴史小説が多い宮城谷作品からは時間の関係でしばらく離れていましたが、やはりいいものですね。
『草原の風』は後漢を興した劉秀(光武帝)を描いた作品。

前漢後期、新王朝王莽の暴政に人民は疲弊していた。各地で叛乱が起きつつあったころ、留学から帰っていた劉秀は起った。それは多くの親族を失い、自らも幾度となく危機にさらされる苦難の道のりだった。しかし、「赤心を推して人の腹中に置く」劉秀、「徳は弧ならず」であった。人心をつかみ、次第に中原を併呑し、ついには皇帝となった。

上・中・下三巻に及ぶ本書は様々に中国史書を引用しており、読み応えがあった。近年忘れかけていた充足感を得ることができるひとときだ。

現代はどうだろうか。徳を積む、という感覚はとうに失われてはいないだろうか。虚空に喘ぎ、欲望に溺れていないだろうか。
歴史に学び、日々の精進にあたりたいものである。

草原の風(上) (中公文庫)
宮城谷 昌光
中央公論新社
2013-09-21


草原の風(中) (中公文庫)
宮城谷 昌光
中央公論新社
2013-10-23


草原の風(下) (中公文庫)
宮城谷 昌光
中央公論新社
2013-11-22



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2013年12月15日

世界をひとりで歩いてみた

当初は春先に発売と思っていましたが、大幅に加筆修正?して待望の発売。




読み終えると、大学時代の初海外中国ひとり旅が思い出されました。改めて日記を読むと、自分でもすごいと思うくらいだし(^^;)
でも、安全さえ確保できるならば、こうした自由な旅は最高に楽しいし、得るものも大きいのではないかなと思います。



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2013年11月17日

グリード

トヨタがリーマン・ショック以前の水準まで経常利益を回復―2008年9月15日のリーマン・ブラザーズ破綻とそれに伴う金融危機はひとつのタームを表すほど、金融史に残る事件となった。

本書はリーマン破綻前夜の、サブプライムローン問題混乱期にサムライ・キャピタルの鷲津政彦はウォール街に姿を現す。アメリカを買い叩く…。かつてバブル崩壊の時に外資は屍を貪り食い尽くしていった、その仇討ちをするというのだろうか…。
強欲(グリード)と欺瞞に満ちたウォール街とワシントンD.Cを巡る金融界の死闘をエキサイティングに描き切った傑作です。

“カネ”という価値のバランスを取るための社会システムが金融資本主義によって踊り狂った世界とその崩壊。いつしか人間は道具であるはずの”カネ”に振り回されるようになっていた。地獄の沙汰もカネ次第というほど、”カネ”なしでは生きていけない社会にはなってしまったが、社会として成熟期に入っているとするならば、もう一歩先の安定があってもいいのではないだろうか。

しかし、今回の”鷲津政彦”もカッコよかったです。

グリード 上
真山 仁
講談社
2013-10-30

グリード 下
真山 仁
講談社
2013-10-30



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2013年10月30日

だから荒野

46歳の誕生日、中年夫婦の不和から妻が家出する顛末を描いた作品。
ある意味では突拍子のない展開に驚きを禁じ得ないのだが、あるいは”事実は小説より奇なり”で、こんなこともあるのかもしれない。

”家族””会社””学校”という均衡に保たれている日常の崩壊は、もしかしたらちょっとしたことで起きるのかもしれない。
しかし、環境を変えてもその人間の本質はそうそう変わるものでもない。

この作品では人間の、誰もが持っている醜い部分がふんだんに散りばめられている。無神経な物言い、騙し、女性関係、仲間内の噂…。感受性の高い読者なら耳が痛いことも多いだろう。

とにかく、遠くへ荒野を走る。
果たして、そんなことは可能だろうか。

私たちは果てしない荒野の向こうに何を見るのだろうか。

だから荒野
桐野 夏生
毎日新聞社
2013-10-08



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2013年09月17日

祈りの幕が下りる時

つい、一気に読んでしまいました。
読書タイムは自分にとっては至福の時間だと改めて思います。
帯のコピーで即買いしたのですが...。

「悲劇なんかじゃない これがわたしの人生」

運命の行方など誰にもわかりはしない。
逃れられない断崖から極限の秘密を抱えて生きていくことになった人間が、想いを馳せた相手と息子。その人物こそが事件を解き明かす当事者になっていく。
人との関わりを避けてきたはずなのに、その心の底にはありったけの人間の情愛があった。

「ありがとう。博美、ありがとう」

登場人物の有様がありありと瞼の裏に浮かび、涙せずにはいられない。

"悲劇"という言葉で片付けられない苦しみを抱えて生き抜いてきたから、思い残すことはなかったのでしょう。
それこそ一世一代の『異聞・曽根崎心中』の舞台が終わるのだ。

運命の行方はわからないが、その足跡は確かに残っていく。
他人の価値観では測りきれない生き様がそこにある。




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2013年08月18日

どん底から生まれた宅急便

気になっていた本で、一気に読んでしまいました。
今でこそ当たり前に普及している宅急便、それでも挑戦を続けるヤマト運輸の精神を目の当たりにしたような気がしました。
新しいサービスを立ち上げ、社内に始まり、官公庁とわたりあるき、社長にまでなった著者がその想いをぶつけた本書は本当に貴重だと思いますね。

どん底から生まれた宅急便
都築 幹彦
日本経済新聞出版社
2013-04-23



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2013年07月15日

球体の蛇

どういうわけか、炎天下の大阪城公園周辺で立ちながら読むことになったが、一気に読んでしまった。

離婚をきっかけに実の両親とは異なる2人姉妹(サヨとナオ)とその両親(乙太郎と逸子)のもとで身を寄せて少年期を過ごしてきた「私」の物語。
その"家族"を見舞った事件は二人の命を奪い、残された者にも大きな傷跡を残すことになる。

"やさしい"嘘だったのか、恣意的な嘘だったのか、思い込みだったのか。
小さいはずだった過ちが、それぞれの人生を翻弄し、罪悪感となって苦しめていく。

結局、本当のところはわからない。

そのなかで、人は苦悶して生き、自ら命を絶つこともある。

道尾秀介氏の作品は毎度人間感情の深淵を覗くところがあって、非常に心に沁みる。

球体の蛇 (角川文庫)球体の蛇 (角川文庫) [文庫]
著者:道尾 秀介
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
(2012-12-25)



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2013年05月12日

起業家

今ではサイバーエージェント社長藤田晋氏は多くの人に知られている。
自分はライブドアを使い続けているが(汗)、ブログと言えばアメーバというくらいメジャーになった。

しかし、起業して上場して、その後のメディア事業を育てていくという成長戦略はどのように実現していくのか。起業してから持続可能な会社にしていく苦しみを本書では率直な言葉で綴られている。
訥々とした語り口、平易な文章なので万人向けということなのかもしれない。

読んでみて改めて感じたのは、インターネット関連事業と、自分の携わるオフラインに根差した生活関連サービス事業とは経営層の考え方も、企業風土もあまりに違うということ。
会社の在り方も大きく変容しているのを感じました。



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2013年04月28日

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上春樹作品ということでメディアも大きく取り上げ、異例の売上を上げている。
今作は主人公多崎つくるが物語で果たす役割が明確になっており、「過去」と「現在」、「夢」の行き来も理解しやすい。テーマも私たち自身が現に抱えているものと通底しており、共感しやすいものとなっている。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 [単行本]
著者:村上 春樹
出版:文藝春秋
(2013-04-12)
続きを読む

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2013年04月07日

ネットで生保を売ろう!

図らずも新設会社が似たような名称になってしまったため、「ライフネット生命」はもちろん知っています。旧態依然として不透明な経営を続ける生保業界に風穴を開けるべく、インターネットベースの生保会社を立ち上げたことは大変興味深く思っていました。
その共同創業者にして代表取締役副社長岩瀬大輔氏による著書は読み始めると一気に読んでしまいました。
好きな作家の小説と同じく、読後には爽快感があり、やはり何かが違うのかもしれないと思います。

ネットで生保を売ろう!ネットで生保を売ろう! [単行本]
著者:岩瀬 大輔
出版:文藝春秋
(2011-03-24)


今ではライフネット生命の保険料が他と比べて必ずしも安くないとの指摘もあり、結局は加入検討者が何を選ぶのかに行きつくとは思いますが、それは様々なサービスが無人化したり、セルフ化、オンライン化してきたことと同じではないでしょうか。

戦後、買収等ではなく、ゼロから生保会社を作った例はライフネット生命のほかにはありません。その途方もないプロジェクトの全貌と、その挑戦の日々を綴った本はいろいろな点で勇気づけられることは間違いないでしょう。

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2013年02月11日

まりしてん 訐藺緝

大友家家臣戸次鑑連(立花道雪)の娘で、7歳にして城督となり、高橋紹運の長男立花宗茂を婿とした訐藺緝韻諒語。戦国好きの自分としては別の著書や立花宗茂の関連書籍でその生き様に触れたことがあり、今回は改めてという感じでした。
男勝りというよりもその潔さ、勇ましさはまさに父譲りで、様々なエピソードが残っています。
その性格が災いして夫婦不仲説も語られますが、本書ではそれには否定的です。子ができなかったことからギクシャクするところはあったものの、実際には仲睦まじかったという立場を取っていてそのあたりは微笑ましいですね。
戦国末期、激動期を過ぎて、家の存続をかけて繰り広げられた闘いの数々はまさに夫婦二人三脚で乗り越え、勝ち残った証なのでしょう。

まりしてん訐藺緝(ぎんちよひめ)まりしてん訐藺緝(ぎんちよひめ)
著者:山本 兼一
販売元:PHP研究所
(2012-11-10)
販売元:Amazon.co.jp


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2013年01月21日

出光佐三 反骨の言魂

出光興産。
就職活動の時に、確かに聞きました。創業者精神が根づく、ある意味では宗教みたいな会社だ、と。
その、ある種の偏見は間違っていないのかもしれないけれど、この本を読んで印象は全く変わりました。
それは「出光佐三」という、一企業という枠組みに収まらない"日本男児"だったからに他なりません。

規制に縛られた戦前・戦時中・戦後の日本を、政府にもGHQにも楯突き、信念を曲げることなく闘い続けた生きざまをこれでもかと見せつけられました。少なからず美化されている部分もあるでしょうが、現代に生きる経営者にこれだけの迫力はあるでしょうか。

妥協という甘えに逃げている自分を恥ずかしく思いました。

出光佐三 反骨の言魂 日本人としての誇りを貫いた男の生涯 (PHPビジネス新書)出光佐三 反骨の言魂 日本人としての誇りを貫いた男の生涯 (PHPビジネス新書)
著者:水木 楊
販売元:PHP研究所
(2012-12-20)
販売元:Amazon.co.jp



出光興産






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2012年08月17日

冥土めぐり

第147回芥川賞受賞作品、読んでみました。
タイトルからして自分にはすごく合いそうでしたが、ストーリーやテイストも悪くない感じです。

選評のなかには「経済力以外のアイデンティティを持ち得ていない日本の縮図」と捉えているように、脳神経の病により身体障碍者となった奈津子の夫太一は"幸せ"とは何かを改めて問いかける装置として大きな意味を担っているように思う。同時に、奈津子の家族がもつ陳腐化した"金欲"の醜さとの対比が際立っている。
しかし、結局はそうした価値観の狭間に苦悶し、受け身を取り続けた奈津子の逡巡が主題となって、このタイトルとなっている。

人生には様々な障害があり、人は都度困惑し、時に打ちのめされる。価値観が多様化しているとはいえ、身近な人の価値観に振り回されることには変わりはないだろう。

そうして、人は止まることもできずに、"冥土めぐり"を続けていくのかもしれない。

冥土めぐり冥土めぐり
著者:鹿島田 真希
販売元:河出書房新社
(2012-07-07)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る



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2012年04月21日

カラスの親指

タイトルに魅せられて購入、不思議な読後感のある本でした。
まんまと騙されましたが、それがまた面白いところ。
あとは単にミステリーというのではなく、人間感情の端々が巧妙に浮き出ていて読者の感情を揺さぶります。
ネタバレしたくないので具体的には書きません。

しかし、この話の展開に則って考えてみると、この世界自体が途方もないトリックであるかのような錯覚に陥ります。
地球が、生命体が、そして人間が存在しているのは必然? それとも偶然?
そのなかで”運命”という名の数えきれないトリックに翻弄されているも考えられます。

普段は全くと言っていいほどミステリー小説を読まないのですが、道尾作品だけは違いますね。感情の奥底にある何かを手繰り寄せるだけの力を持っています。

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)
著者:道尾 秀介
販売元:講談社
(2011-07-15)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る



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2012年04月11日

【アプリ】木の葉乱舞【モノガタリ文庫】

アップルストアのアプリで知人が関わっている「モノガタリ文庫」というのがあるのですが、そこから無料アプリがリリースされたのでご報告です。

大学時代に創作していた小説の中から、ごく短いものばかりの4篇の掌編小説をまとめた「木の葉乱舞」という作品で、特に面白いというものでもありませんが、自分としては意欲作です。
ベーンネームは「立花秋月」。
恥ずかしいですが、よろしければ読んでみてください。
率直な感想など頂けるとうれしいです。

▽iPhone/iPadをお使いの方
>アップルストア>"モノガタリ文庫"または"木の葉乱舞"で検索すると出てきます

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